牡蠣は海域に浮遊する主に植物プランクトンを食べていると言われますがもう少し詳しく見てみましょう。
牡蠣を水から空中に出すと殻をしっかり閉じていますが,海水に浸けて,しばらくすると殻をわずかに開きます。殻を閉じる時は貝柱(閉殻筋)の強い力で閉じていますが,この閉じる力が緩む感じです。ちなみに弱ったり死んだ牡蠣は殻を閉じることができないので空中でも殻を開けたままです。
牡蠣は水中でわずかに殻を開いて,その隙間の鰓のある側から海水を吸い込んで貝柱のある側から放出しています。この水流は牡蠣の鰓の表面にある微細な繊毛が起こしています。例えば殻を開いた隙間あたりに墨汁や牛乳など少し垂らすと,はっきりと水流を見ることができます。
鰓の役割
牡蠣が鰓で水流を起こすのは,呼吸するためだけではなく,餌を食べるためという大変重要な目的があります。
海水中にただよっているいろいろな物は水流で殻の中に取り込まれ鰓の網目の粘液に引っかかります。引っかかったものは水流を起こす繊毛とは別の役割の繊毛の動きで,鰓の端(蝶番の側)にある口まで運ばれます。この口元(唇弁)には,食べられるものと食べられないものを識別する役目があると言われています。食べられるものは口から消化管へ,食べられるけれど濃度が濃すぎる時や食べられないものは粘液で固めて偽糞として殻の外へ放出します。食べられないものや,好みでないものがあまりに多い時は,しばらく殻を閉じてしまうこともあります。牡蠣は動き回ることができないので,生きていくため海水に浸かっている間は海水を濾過し続けます。
牡蠣の濾過能力
牡蠣はこの海水を濾しとる能力で,濁った海水を短時間に透明にすることもできます。
写真は25リットルの水槽に海水(約20℃)と牡蠣を5個入れたもので,浮遊珪藻(約30万細胞/ml)を加えて濁らせています。3時間後には珪藻濃度は50分の1になりました。牡蠣の周りは糞と偽糞が散らばっていました。
海の牡蠣は,海水を透明にすることで海藻などの植物の光条件を良くすることに貢献するほか,糞や偽糞を周囲に沈下させることで周囲の生物に有機物を供給するとともに,入り組んだ形は様々な生き物に住処を提供しています。牡蠣は海の環境を整えるために大いに役立っています。
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