天然マガキと養殖マガキ

もとは同じ

一般的には養殖マガキと天然マガキは同じ種類です。養殖が行われている海域で採苗されている広島湾では,稚貝が採苗器のホタテガイの殻に付着すれば養殖マガキに,岸壁などに付着すれば天然マガキになります。

天然マガキの厳しい環境

天然のマガキは海岸の潮間帯,つまり満潮と干潮の間の高さの石やコンクリートなどの基質に帯状に付着して生活しています。ここは潮の干満によって1日のうち2回ほど海水から露出する時間があります。この時間は呼吸は出来ませんし餌も食べられないので次の潮が満ちるまで殻を閉じてじっと耐えなければなりません。しかし,他の付着生物に覆われて窒息したり餌を取り合うこともないので厳しい環境条件ですが他の生物に邪魔されない本来の生息場所です。マガキ養殖における「抑制」工程ではこの環境をうまく利用しています。

超肥満の養殖マガキ

天然の牡蠣は一旦付着すると移動せずに,そこで一生を過ごします。しかし,養殖マガキはホタテガイの殻などの基質に付着させたり,1個1個をバラバラにしたりしています。これによって自由な移動や収穫が可能になります。

筏などから餌の豊富な海に吊り下げて養殖(垂下養殖)すると,24時間常に餌を食べられるので天然マガキより早く成長し,よく太ります。

店頭で見ることができるいわゆる「プリプリ」状態の牡蠣は天然ではまずお目にかかれない超巨大,超肥満の状態です。このため養殖マガキは短命で,大きくなればなるほど,夏の高水温に耐えられず続々と死んでしまいます。南に行くほど大きなマガキを養殖生産するのは難しいと言えます。

余談ですが,このように超巨大,超肥満の養殖マガキは夏には大量の卵・精子を放出するので安定した採苗(種苗の確保)に貢献しているとも言えます。

また,垂下養殖の環境は本来の生息環境ではないため,いろいろな競合生物,例えばムラサキイガイ,ホヤ,カンザシゴカイ,フジツボなど外的生物による被害が発生するリスクもあります。これらの被害を避けるために時期に応じて海域や養殖水深を変える工夫もされています。

このように,マガキ養殖は自然のサイクルから一部を取り出し,生物の特徴と環境条件を巧みに利用してメリットを最大限に引き出すことで成立しています。

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