ホタテ殻以外のコレクター
ホタテ殻以外のコレクターは,これまでに様々な素材や方法が実用化されていますが,その中でフランス製の「クペル(coupelle)」がよく知られています。クペルはホタテ殻の代わりに樹脂製の皿を重ねたような構造です。稚貝を剥離,選別する専用機器も市販されており,工業製品のようにカキを生産することができます。
日本でもクペルの導入した企業もあるようですが,平田水産はゼロからのスタートですし,低コストの生産を標榜しています。また,当初の取り扱い量から見てもクペルおよび自動機器の導入はすぐには必要ないというか無理ということで,以前から検討していていたPETボトル片をコレクター素材として採用することにしました。
使用済みPETボトルを利用したコレクター
使用済みのPETボトル片の利用は,次の論文の写真を見たのがきっかけです。硬さと柔軟性が適当で,稚貝が付着し成長することができ,少し衝撃やひねりを加えれば剥離することができます。まず,リサイクル品のため低コストで入手可能です。
A highly efficient oyster spat collector made with recycled materials. Esperanza Buitrago, Daniela Alvarad, Aquacultural Engineering, Volume 33, Issue 1, June 2005, Pages 63-72.
私は2007年にホタテ殻とPET素材のコレクターを材料に,マガキ幼生の付着実験を行いました(未発表)。この実験ではこれら2種類のコレクターに成貝による前処理を施し,付着する稚貝数を比較しました。
その結果,無処理の場合,PETボトル片コレクターへの付着数は非常に少なく,ホタテ殻の約60分の1でしたが,成貝による前処理を施すと付着数は約44倍に増加しました。とはいえ,ようやく無処理のホタテ殻程度の付着数に達したという程度です。その後の検討の結果,PETボトル片をしばらく海水に漬けて表面に汚れ,つまりバイオフィルムを形成させると稚貝が付着しやすくなることがわかりました。おそらくPETボトル片の表面はホタテ殻に比べて滑らかなため表面の条件が整うまでに時間がかかるものと思われます。
使用済みPETボトル(大きさはバラバラです)の上下を切り取り,筒の部分を大きさに応じて2〜4枚に切り分け,真ん中にハンダゴテで穴を開けました。
ストローを切断しスペーサーにして糸を通します。5mの長さの糸に100枚を目安に連結します。上の写真のコレクターは初期のもので,現在の間隔はこの2倍くらいの間隔です。
一度作れば,何年も使えるのであとは耐久性の問題です。PETボトル片は丈夫ですが,糸やストローは素材によっては,紫外線で劣化することがありますので,注意が必要です。
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